第1章 序 論

1.1 研究の背景

 パソコンやネットワークの普及とともにインターネット利用者が急増した。最近ではテレビやラジオの放送でも各自でホームページを作成している番組が多く、放送中に「アドレス」や「アクセス」といった言葉を目や耳にすることがある。ラジオ番組の中では、番組中に視聴者から届いた電子メイルを紹介するというコーナーを設けているものも多い。インターネットは1967年アメリカで軍事・研究用として生まれたのが起源であるが、現在、日本で話題となっているインターネットの使用目的の多くは仕事・研究と、趣味・娯楽である[1,2]

インターネットの中で買い物ができる電子商取引というものがある。商品を購入する際の代金の支払いは電子決済という形で行われるが、近年、支払い手段の中で電子貨幣の存在が注目されている。

1.2 研究の目的
 
 電子貨幣は、我々が普段利用している現金の役割をネットワーク上で行うものである。現在、注目されている利用法は、インターネット上の電子決済の場だが、将来的には、現金と全く同じ価値を持つようになり、インターネット上だけではなく、普段の取引(お金のやり取り)全てに電子貨幣が使われるようになるという仮説もある。ニュースや新聞記事では電子貨幣の利点が目立つために、我々は「役に立つもの」程度の知識しか持つことはない。ものごとには利点が存在すれば欠点もあるのが常であり、電子貨幣においてもそうである。

電子貨幣はネットワーク上でのみ存在する電子情報(データ)であるため、複製(コピー)をどう防ぐか、また、経済的価値をどのようにして持たせるかといった問題がある。例えば、現金には「紙幣類似証券取締法」という法制度があるが電子貨幣には、現段階で法制度はない。我々には、このような問題点は目につきにくいが、開発・研究している側の企業や銀行には分かり切っていることだろう。それらの問題点を克服しようとしてまで、電子貨幣の実現に取り組んでいるということは、将来我々が利用するようになる可能性はかなり高いと考える[1]

本研究では、なぜ、今、電子貨幣が必要とされているのかを、また、電子貨幣を実現するために解決しなければならない複製や経済的な課題や未来の電子貨幣像を明らかにするために調査・研究を行った。研究方法は、文献や資料、専門家の意見を参考にしたほか、はがき・紙面・インターネットによるアンケートを行った。

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